「鋼の錬金術師」祭

というわけで、前にも書いたとおり、アニメ「鋼の錬金術師」全51話を一気に見た後、劇場版をそのままのテンションで観に行くという凶行をしたので、その感想。
以下、何の注釈もなしに鋼関連の言葉やネタばれが続出するので自主規制。
アニメ版の鋼は、原作に比べて重い、暗い、テンポ悪いの三重苦で、原作が好きであればあるほど見ていて辛いものがあると思う。原作のストーリーが一本道であるとするならば、アニメはその一本道を大きく左右、時には上下に蛇行しながらうねうねと進んでいき、最終的にはまったく違うゴールに着地したという感じ。そして、見ている間は「ああ、ここであのギャグが入ると場が和むのに」とか「あのセリフがカットされてる!」とか、そういうことばっか考えてました。そういう人は多いんじゃないかな。
ただ、原作とはまったく別次元の、別なお話と見た場合には、なかなか良くできた良作の部類に入るアニメだと思います。原作とはまったく違うストーリー展開をするし。特に、「等価交換」に対するアプローチはなかなか秀逸で、上手く説明できていたように感じました。原作の「等価交換」の原理に納得いかない人も、これならある程度納得いくんじゃないかな。
で、劇場版の感想ですが、これはちょっと思っていたよりも酷かった。なんというか、薄い。この作品のどこが良かったか説明してと言われると、ちょっと上手く説明できないです。えーと、あ、ロイはかっこよかったです。
何が薄いかと言うと、エド以外の登場人物の描写が薄い。ロイは「錬金術を使おうとすると幻覚が見える」というトラウマに苦しんでるみたいなことを言っておきながら、なんのエピソードもなしに最後にやたらとかっこいいし、ノーアの能力はいったいなんだったのかの説明もない。ウィンリィは待つだけの女じゃないような行動を取ったわりには、最後はついて行こうとしていないし、悪の親玉(名前すら覚えていない)の行動なんかは「結局お前個人の感情かい!」と突っ込みたくなるくらいに薄い。アームストロングにいたっては退役したのか、現役なのかも分からなかった(まぁそれはどうでもいいか)。あと、最大の疑問がエンヴィ。「なぜに竜?」というテレビアニメの頃からの疑問にも答えはなかった。
といった具合に、とにもかくにも説明不足なのである。なんかこう、テレビの方はしつこいくらいに説明や心理描写をしていたのに、映画になるとスパーンと省略されていて、ものすごく物足りなさを感じました。映画を見終わった後、「すごい面白かったー!」という女性の感想が聞こえてきて(それもかなり感極まった声で)、思わず「どこが? ねぇどこが?」と問い詰めたくなりました。まぁキャラ萌えしてる人には大満足のデキだったのかなぁ。
総合的な感想をいいますと、重く、暗い展開がだらだらと続くので、そういうのが好みでない僕は見続けるのがけっこうしんどかった。ところどころに入るギャグも、ビジュアルで笑わせようとするあまりに、間やテンションがおざなりだったり、ギャグが入るべきところに入ってなかったりと、"空気が読めてない"感がいなめなかったです。これはセンスの問題なのかな。週一30分なら見れるけど、続けて見るもんじゃないなと痛感したです。
ただ、まったく見るべきところはないかというとそういうわけでもなく、広げた風呂敷を丁寧にたたもうとしているところや、原作をそのままなぞったストーリー展開にしようとせず、アニメ版ならではのオリジナリティを出そうとしているところ、細かい伏線を張ってはしっかり回収しているところには好感を持ちました。製作スタッフの「ただの原作付きアニメにはしないぞ」という情熱が伝わってきました。うん、いい作品だと思いますよ。
そして、そういう作品の元になっている原作を生み出した荒川弘さんはもっとすごいと、このアニメを見て思うに至ったわけで、それが一番感心したところかもしれないなぁ。
なんか、うまくまとめられていませんが、感想はこんなところです。あと、「祭」は楽しかった。いい大人がリポD飲みながらアニメ見ているということも、そろそろ寝ないとヤバイのに、そんなときに限って眠眠打破が効いてきて眠れなかったりしたことも、すごい楽しかった。こういうのをまたしたいけど、次は何でしようかなぁ。希望としてはもうちょっと話数が少ないのがいいな。