アヒルと鴨のコインロッカー/伊坂幸太郎

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

結論から書くと、面白かった。
2つのストーリーが交互に展開する、いわゆる「カットバック」方式で描かれており、これがものすごく効果的に作用している。ストーリーは、「現在」と「過去」が交互に展開する。「現在」の合間に「過去」が描かれ、「現在」で描かれる”謎”を「過去」が補完することでどんどん読み進めたい気持ちにさせ、「過去」の先にある「現在」を読んで”知っている”ことでストーリーをよりスリリングなものにする、という仕組み。
ストーリー的にはごくありふれた内容で、真新しいところは何一つないといっていい。それをカットバック方式で描いていくことで、読者をものすごい力で引き込む作品に仕上げていることに驚いた。なんてことない材料を使って、三ツ星レストランの味に仕上げるシェフのよう、といったらたとえが悪いか。とにかく、すごい料理テクを見た感動というか。
あと、これだけは書いておきたいのだけど、これはミステリです。そして、すべてを知ったうえでもう一回読んでも面白い作品です。「あー、アレはそういうことか」とか、「うわ、このセリフにはそんな意味が」といった”知っているから分かる要素”がてんこ盛り。まさに”伏線の鬼”(と勝手に名付けてみたよ)伊坂幸太郎の面目躍如といったところだろう。このあたりは、伊坂作品に多く見られる傾向なので、そういうのが好きな人にはたまらないはず。だからさ、読めばいいじゃん。You! 読んじゃいなよ!!(えー。)
 
いまは同じ作者の『重力ピエロ』を読んでいます。これもまた、違った感じのいい展開しています。伊坂すごいナー。
重力ピエロ

重力ピエロ