大阪環状線2007/劇団タルオルム

劇団タルオルムの大阪環状線2007に、友人が出演しているということで、先週の日曜に観てきました。
演目の概要を劇団サイトより引用すると、

電車で通学する朝鮮高校生ファミは、ソウルから旅行にきた女−スンランに出会う。
いつの間にか二人を乗せた環状線は、1948年4月の朝鮮人集落へとむかう。
夢なのか現実なのか戸惑う二人を巻き込んで、解放後、雨後の筍のように建てられた民族学校は、閉鎖の危機に直面する。
ファミとスンラン、そしてテイル少年との出会い・・・
在日コリアンのルーツとも言える、4.24教育闘争を生きた人々のひたむきな想いと、今を生きる在日コリアンの希望を描く。

てな感じです。物語のキーワードは引用文にもあるとおり、「4.24教育闘争」で、このときに起きた射殺事件にスポットを当てたもの。いわゆる”タイムスリップした主人公が実際に起きた悲劇を体験する”モノです。
 
で、感想ですが、非常に興味深く面白い作品でした。
導入から序盤にかけては、微妙な感じで進んでいくのですが、中盤からラストにかけての展開はすばらしかったです。まぁ、ちょっと、アレですね。ミュージカルっぽく歌って踊っては正直キツかったし、序盤は退屈過ぎてウトウトしてしまいました。すみません。
とはいえ、主人公のファミとスンランの描かれ方はとても面白く、事件に巻き込まれたことによって二人の人生が交差し、大きく分かれて弧を描き、ラストで再会を果たす物語はとても秀逸でした。また、二人の心境の変化というか、事件と関わることによる意識の変化が見ていて顕著で、描き方が巧いなぁと感じました。
物語としても、事件的にはあからさまな”日本人による朝鮮人弾圧”を描きつつも、それほど日本人が”悪”や”敵”としての象徴としては描かれておらず、どちらかと言うと”同胞よ、いまこそ誇りを取り戻そう!”といった感じでした。それがファミのラストのセリフ「あんたもチョゴリ着ぃ」というセリフに感じられ、とてもいい気分で見終えることができました。あのセリフが無ければ、こんな感想を書こうとは思わなかったかもしれません。
 
こういったテーマ的に重くなりがちな題材を扱いつつ、それなりに軽快に物語が進み、終盤でどーんと持って行き、ラストは晴れやかに終わる、とても良い芝居でした。これで1500円なら上々でしょ。いいもん見してもらいました。ごちそうさま!