LOAN(3)
前回までのLOAN……。
「事前審査の結果は待ってからでは遅いです。ここは契約を先に!」
「都市銀行だけではなく、地方銀行も借入先の候補に!」
「ローン特約があるので万が一にも安心です!」
※ローン特約についての説明
1.買主(僕ら)が住宅ローンの審査に必要な書類を提出したが、結果融資を受けられない場合は、買主はこの契約を無条件で解約できる。
このとき、売主は手付金を無利息で買主に返還する。但し、買主の故意または重大な過失により、融資決定の実現を妨げた場合は、この限りではない。
2.本融資(住宅ローンの審査に通ること)交渉の期限は平成△年○月×日までとする。
そして。
「地方銀行は無理!!」
【土曜日・18時頃】
彼女の理系脳をフル回転させてシミュレートした結果、地方銀行の住宅ローンでは、僕らが考えているような返済プランは組めないとの結論だった。
細かい説明は省かせてもらうが、要はリスクが高すぎて、後々面倒なことになりそうな気配が濃厚だということ。一言で言うなら、
「変動コワイ」
まーそういうわけで、地方銀行からの融資は、たとえ向こうがOKしたとしても、こちらがNGを出さざるを得ないわけで。
都市銀行の住宅ローンなら、僕らが希望している返済プランが組めるので、それに関してはあまり心配してなかったのだけど、地方銀行でということになるとそうはいかない。
そうなると気になるのが、昨日担当Hから聞いた質問の回答。
【金曜日・16時頃】
「地方銀行のローンのプランについて、よく分かっていないので何とも言えないいんですけど、もし、都市銀行がダメで、地方銀行のローンの審査に通っていて、でもこのプランでは組めない、という理由でローンの契約を結ばなかった場合、手付金はどうなるんですか?」
「その場合はローン特約は適用されませんね。手付金に加えて、仲介手数料も発生します」
つまり、融資を”受けられない”わけではないから、故意に融資決定の実現を妨げた場合に当たるということ。
【土曜日・19時頃】
ありえねー!
都市銀行は住宅ローンの可能性薄いわ、地方銀行は返済プランに無理があるわ、さらには地方銀行に審査書類を出して、通ってしまったら、そのローンに申し込まないと手付金没収ってことじゃないですか。しかも仲介手数料まで取られるって!
あ・り・え・な・い・!
事情が変わった。
そんな状況ではとうてい判子は押せない。都市銀行以外の融資は受けられないので、地方銀行の審査に申し込んだら最後、身動きが取れなくなる可能性が出てきた。こいつはヤバイ。ヤバイぞー。
ここで思い出して欲しい。ローン特約のこの一文。
”但し、買主の故意または重大な過失により、融資決定の実現を妨げた場合は、この限りではない。”
融資決定の実現を妨げた場合は、この限りではない。融資決定の実現を妨げた場合。つまり、地方銀行のローンの審査に申し込まない、という行為すらも、”融資決定の実現を妨げた場合”にあたるのではいだろうか、という疑念。
この疑念を解消しない限り、契約書に判は押せない。
土曜日のミーティングは、この疑念に対する回答次第では契約できないという結論に達した。危ない石橋は、叩いて踏んづけて非破壊検査してでも安全に渡りたいのが僕たちだ。疑いすぎて困ることはないはず。
そして翌日、いよいよ契約に臨むことになる。
(つづく)